最近聞かなくなったヒアリどうなったんだろう。ヒアリについて気になったので調べた
ヒアリの生態について
最近日本国内の様々な港で発見され、その強い毒のせいで話題となっているヒアリですが、具体的な生態について詳しく知っている人は少ないでしょう。ヒアリはもともとアメリカから南米が原産とされる生物で、現在ではオーストラリアやアジア各国諸国へと侵入を果たし、定着していると言われています。
ヒアリが危険視される最大の理由は、人間の命を奪うこともあるほどのヒアリの毒の強さにあります。そもそもヒアリという名前が付けられた背景も、一度刺されればまるで酷いヤケドをした時のような痛みを感じるという恐ろしい事例から来ています。
ヒアリの身体的な特徴としては、触覚の船体部分に2節ほどの膨らみがあること、そして腹部付近に2つのコブを持っていることなどが挙げられます。
ヒアリは水はけがよく日当たりの良い場所を好んで巣を作るのですが、発祥の地である南米地域よりもアメリカなど侵入した先で爆発的に繁殖を成功させていることを考えると、住宅地や公園といった整備された都市環境が生態に好都合だったと考えられます。
実際に公園などで巣が見つかるケースが多く、マウンド状をした大きなアリ塚に成長することもあります。他の数多くのアリと同じように、一匹の女王アリを頂点として多数の働きアリが存在する社会を築いています。
女王アリは何と1時間に約80個ほどの卵を産み続け、生涯で約200万から300万個もの卵を産むと言われています。働きアリは全てがメスで繁殖能力は無く、その体の大きさにもバラつきがあります。大きな働きアリは巣を作ったりエサを食べやすく加工し、小さい働きアリは巣の中で仲間の世話をしたりエサを集めるなど仕事の担当も決まっています。
敵を攻撃する際、大きい働きアリは平均で約4回ほど刺し、小さい働きアリは約7回も針を刺してきます。小さい個体の方が攻撃力が強いと言えるので、小さいから大丈夫だろうと油断して触ったりしないように注意しておきましょう。
ヒアリ侵略の歴史と被害
ヒアリは南米の森林地帯を発祥の地としており、現在主な生息域となっているアメリカへは1930年頃に侵入してきたとされています。侵入して以降、天敵がいないアメリカの地でヒアリはその生息域を確実に拡大し続けており、早急な対策が模索されています。実際、アメリカではヒアリが問題視され始めた1950年始めから1980年代までの約30年間にわたって、トータルで約1億7千万ドルという膨大な費用をかけて殺虫剤を撒くまど様々な対策を行っています。こういった対策はほとんど効果が得られることもなく、逆に殺虫剤をまき散らしたおかげで他の生態系へも悪影響を与えてしまい、アメリカで環境保護運動が盛んに始められるきっかけにもなりました。
ヒアリにのみ効果のある殺虫剤の開発なども進まなかったため、原産地である南米よりも遥かに多くヒアリが繁殖してしまうことになり、アメリカから更に他の国々へ侵入を許してしまう状況となってしまいました。
日本での被害を考えてみると、関東以南の広い範囲で定着が可能な環境が整っており、住宅地や路上、公園などあらゆる場所で被害を被る可能性が高くなっています。
特に危険性を理解できない子供たちが不用意にヒアリに触れてしまう可能性もあり、人的被害をゼロにすることは非常に難しいでしょう。
実際にヒアリに刺されても必ず命を落とすという訳ではなく、どの程度の被害を及ぼすかは専門家の間でも意見が分かれるところです。
ただ、ヒアリのせいで被害を被るのは人間に限った話ではなく、エサの対象とされる柑橘類の樹木やジャガイモ、トウモロコシといった作物への被害も無視することはできません。
また、生まれて間もない弱い動物を嗅ぎ分けて襲い掛かる習性があるため、作物以外にヒヨコや子牛、子豚といった家畜も大きな被害を被ってしまうケースもあります。
被害を防ぐためのコストも非常に高くつくので、大発生した場合などは経済的な損失も計り知れません。さらに、ヒアリが見つかればその土地の価値は下がってしまいますし、電線を食べて損傷を与えることもあるのでライフラインの面でも心配が残ります。
アメリカの場合、ヒアリによる経済的な被害は1年間だけで約50億ドル以上にもなると言われており、単なる害虫として済ませることのできない存在となっています。
日本国内でも侵入した女王アリが既に繁殖を開始したという調査結果も出されており、今後の対策が急務となっています。
ヒアリに刺された時
ヒアリが日常的に存在するアメリカでは、1年間のうちでヒアリに刺されてしまう人の数が約1,400万人もいます。そのうちの約100人前後は亡くなってしまうほど重篤な症状を引き起こしており、決して楽観視してばかりもいられません。
もちろん亡くなった人の数は推定値なので、確実にヒアリの毒によって亡くなったとは断定できないものも含まれていますが、それでも一昆虫の被害としては非常に甚大だと言えます。
日本ではスズメバチに刺されて亡くなった人のニュースをよく耳にしますが、それでもスズメバチを原因として無くなる人は1年間で約20人程度です。
アメリカと日本では人口や密度などもことなるので一概に比較はできませんが、この数を考えるといかにヒアリが恐ろしい存在かが窺えます。
実際にヒアリに刺されてしまうと、まず患部に激痛が走ります。刺された部分はみるみる赤く腫れあがってしまうのですが、ヒアリは一匹が最大で7回程度刺してくるため、狭い範囲でいくつもの腫れが出来てしまいます。
ハチなど他の昆虫に刺された場合とは異なり、独特の膿疱が生じてしまうのが特徴です。
昆虫の毒としてはタンパク質が主な成分となっていますが、ヒアリの場合はアルカロイド毒と呼ばれるソレノプシンという成分がメインとなっています。
この成分は他のタンパク質の機能を阻害したり、神経伝達物質の機能を阻害したりします。抵抗力の弱い高齢者や幼い子どもなどが多数のヒアリに刺されてしまうと、これらの作用によって呼吸困難に陥り、亡くなってしまうケースもあります。
多くの場合は刺されてから1週間ほどで治癒するのが一般的ですが、過去にヒアリに刺された経験のある人などは体内で免疫機能が過剰反応を起こし、重篤なアナフィラキシーショックを発症してそのまま亡くなってしまうこともあります。
万が一ヒアリに刺されてしまった場合は、毒を吸ってしまう可能性があるので口で吸いだそうとしてはいけません。
漂白剤と水を同じ量で混ぜたものを患部にかけ、丁寧に洗うようにしましょう。痒みや火照りを伴うので、抗ヒスタミン剤を塗布したり細菌感染に対する治療薬などを使用すると効果的です。アナフィラキシーショックを起こしてしまった場合はのん気に消毒などしている暇は無いので、一刻も早く救急車を呼んで専門的な治療を開始しなければなりません。こういった内容を聞くと恐ろしく感じますが、実際にヒアリの毒で死ぬ確率は約14万人に1人程度なので、1%にも満たない非常に稀なケースだと覚えておきましょう。
ノミバエがヒアリ壊滅対策の切り札
ヒアリは一度新しい場所に侵入すると瞬く間に繁殖を繰り返し、環境さえ整っていればすぐにその土地に定着してしまいます。完全に定着してしまえば全て駆除するのは非常に難しいので、そうなる前に出来るだけ早く発見と駆除を行っていく必要があります。
現在も日本の各貿易港を中心にヒアリがいないかチェックが進められていますが、連日至るところで新しいコロニーが発見されているため定着は時間の問題だと言えます。
既に広く国土にヒアリが定着してしまっているアメリカの場合、過去数十年にわたって様々な対策や駆除が行われてきましたが、どれもヒアリの強い生命力を根絶させるには至っていません。
ただ、最近はヒアリの天敵とされているノミバエを利用した駆除方法が注目を集めており、実際にアメリカでは研究が進められています。
ノミバエとは体長が0.5ミリから6ミリほどの小さなハエの一種で、日本でも古くから存在するありふれた昆虫です。
このノミバエはヒアリが体内発生させるフェロモンを感知し、直接その体に卵を産み付けることができるのです。
1匹のノミバエがヒアリに産み付ける卵の数は約200個ほどで、体内で孵化した幼虫はヒアリの体液を少しずつ吸いながら成長し、やがては脳を食べ尽くしてヒアリの命を奪うことになります。
最終的には食べ尽くされたヒアリの頭部がポロッと落ちてしまい、開いた部分からノミバエの子供たちが次々に飛び立っていくことになります。
このような経過を聞くと非常に気持ち悪く感じますが、殺虫剤のように他の生態系や農作物などに悪影響を与える心配もなく、ヒアリにのみ確実に作用することができるので非常に効率の良い方法だと言えるでしょう。
ノミバエの寿命は約10日ほどしかないのですが、その期間しかなくてもノミバエ自体が繁殖能力が高く、卵を産み付ける数も多いので有効な駆除方法になると期待されています。
ヒアリを駆除できてもノミバエが大発生してしまっては意味が無いのではと感じる人もいるでしょうが、ノミバエは仮に大発生しても私たちや家畜、農作物にとって不快以外の悪影響は与えません。そのまま放っておいても大きな問題はありませんし、ノミバエを駆除する方法や殺虫剤なら昔から存在しているため対策も行いやすいのです。
ヒアリ相手に駆除方法を試行錯誤するよりよほど時間も手間もかからないため、ノミバエを使うことがヒアリ壊滅対策の切り札になっていると言えるのです。
匂いでヒアリを見つける事のできる、ヒアリ犬なども注目を集めています。
米国ではヒアリ壊滅対策にノミバエ導入【まとめ】
日本でも毎日のようにテレビや新聞などでヒアリ発見のニュースが伝えられていますが、実は何年も前から既に侵入して定着を果たしていると警鐘を鳴らす専門家も多いのが現状です。
まだ発見されていないだけで、他の地域でもヒアリが繁殖を続けている可能性もあるのです。日本でもヒアリの大繁殖が懸念されている中で、いかにヒアリを効果的に駆除していくかが大きな課題となっています。
こういった場合、参考になるのが既にヒアリが定着して久しいアメリカの対策方法です。
毎年甚大なヒアリ被害に頭を悩ませているのが発祥の地とも言えるアメリカで、毎年100人近くもの人々がヒアリのせいで亡くなっているとまで言われています。
私たち人間の命を脅かすだけでなく、ヒアリは農作物や家畜などにも深刻な被害を与えてしまうため、それらを含めた経済的な被害は分かっているだけでも日本円にして年間6,000億円を下りません。このまま放置していても状況は改善しませんし、経済的な被害を看過することもできないので、アメリカでは国を挙げてヒアリ対策を進めています。
その対策の中でも注目を集めているのが、ヒアリの天敵であるノミバエを利用した繁殖阻止対策なのです。
既に具体的な実験などを重ねて導入を進めているのですが、はっきりとした成果のほどは確認されていません。
まだまだ始まったばかりの対策法なので、目に見える成果を得るにはまだ時間がかかるということでしょう。
ノミバエを用いた駆除方法の場合、在来種まで駆除してしまう心配もありませんし、薬品を使用しないので私たちの健康に被害が及ぶこともありません。
台所やゴミ箱にいつの間にか寄って来るノミバエが危険なヒアリを根絶する切り札になるという事実は驚きでしたが、実際にヒアリが見つかった地域にノミバエを大量に放つのは心理的な面で問題も残りそうです。
爆発的に繁殖してしまってからでは遅いので、より良い形で効果的な対策が行われるのを祈るばかりです。
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